前立腺肥大症のくすりをのんでいると白内障の手術を受けられないのですか?(72歳男性)
 そんなことはありません。前立腺肥大症のくすりをのんでいても、白内障の手術を受けることはできます。ただし、前立腺肥大症のくすりの中には白内障の手術に影響を及ぼすものがありますので、ご自分ののんでいるくすりをあらかじめ眼科の先生にお知らせしておく必要があります。
1.術中虹彩緊張低下症候群という副作用
前立腺肥大症治療薬の一種であるα1-ブロッカーを服用中あるいは過去に服用したことのある患者さんの白内障の手術中に「術中虹彩緊張低下症候群(IFIS: Intraoperative Floppy Iris Syndrome)」という現象が起きたという例がいくつか報告されています。主な症状としては @虹彩がふにゃふにゃになり、手術中の水流によってうねったり、バタバタ動いたりする A手術の最中に瞳孔が小さくなる、というようなことが起こり、手術が難しくなるというものです。
この副作用は手術がやりにくくなるというだけであり、患者さんの普段の生活には何ら影響はありませんし、患者さん自身も目の異常を感じるということはありません。手術中にこの現象が起こりうることを医師があらかじめ承知していれば、問題なく手術を行うことができます。従って、患者さんは以下の注意事項を守ってくださればいいわけです。
2.患者さんに守ってほしいこと
  1. 前立腺肥大症のくすりをのんでいることを眼科医に必ず報告してください。この副作用が起こりうることを眼科医があらかじめ承知していれば、特殊な器具や薬剤を準備して手術に臨むことができるので危険はありません。眼科医にα1-ブロッカーの服用を隠していると、手術中に突然副作用が現れることになり危険です。
  2. 手術前にα1-ブロッカーを休んだとしても、手術への影響がなくなるわけではありません。勝手にくすりを休むのではなく、泌尿器科医や眼科医とのコミュニケーションが大切です。
  3. 現在服用していなくても、過去に服用したことがあったら、そのことを眼科医に必ず報告しましょう。そのような人でもこの副作用が起きています。
  4. 白内障手術の予定がある人は、α1-ブロッカーをのみ始めないようにしましょう。白内障の手術を受けたことのない男性は、前立腺肥大症になってもα1-ブロッカー以外のくすりで治療してもらった方がいいかもしれません。主治医の先生とよく話し合いましょう。
3.参考までに
副作用の三分類によると、この副作用は「薬理作用」と考えられます。α1-ブロッカーは前立腺にあるα1-レセプターを介して排尿障害を改善するのですが、同時に眼の中(虹彩付近の筋肉)にあるα1-レセプターにも作用してしまうため、このような副作用が起こるのではないかと考えられています。くすりをのみ始めてから、この副作用が起こるまでの期間は半月〜5年以上と人によってまちまちでした。これも、この副作用が「薬理作用」だからです。薬理作用の副作用はいつでも誰にでも起こる可能性のあるものです。皆さん、自分だけは大丈夫、とは思わないでくださいね。
参考)術中虹彩緊張低下症候群を起しうるくすり
成分名 主な製品名
 塩酸タムスロシン  ハルナールD錠
 ナフトピジル  アビショット錠、フリバス錠
 シロドシン  ユリーフカプセル
2008年1月8日作成
K.Asari
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